見つめられる、それだけで
食事を済ませて周囲の者を下げさせると、二人きり。
抱き締める腕と彼の香りに包まれて、アンジェリークは体の力を抜いた。髪を撫でる指が優しく、ずっとそうしていて欲しいと願ってしまう。胸に頬を摺り寄せてアンジェリークはオリヴィエの香りを吸い込んだ。
「そばにいてくれて、ありがとう」
額へ掛かる髪を除け、オリヴィエの唇がそこへ触れる。気遣う声が囁いた。
「ん。私も。あんたがそばにいてくれるだけで、嬉しいよ。今夜はすごく疲れてるだろ? こうしてぎゅってしてるだけで、いいからさ」
疲れてる。確かに今日は疲れていた。精神を遠くへ飛ばしていた事から来る疲労と、そこから体へも負担が掛かっている筈なのだけれど。でも。
えー?! 不満いっぱいの声でオリヴィエを見上げたアンジェリークに、彼は吹き出して笑った。
「こぉら。私はあんたにそういうコトだけ望んじゃいない、って。証明できるんだけど。肝心なあんたがそんなに不満な顔したらダメだろ」
下りてきたくすくす笑いのオリヴィエの唇が、アンジェリークの唇へ触れる。
「困ったな。あんたに望まれちゃったらとても拒めないよ」
ふんわり優しいキスはすぐ離れ、アンジェリークの頬を両手で包んでオリヴィエが彼女の顔をじっと見た。頬を赤くしながら、アンジェリークは必死に言葉を探す。
「だって。ずっと会えなくて。ずうっと会いたかったんだもん。だから……」
「あんたってばホント可愛いんだから」
再び下りてきた唇は、先程よりも欲情を伝えるもの。あっという間にそれに流されそうになったアンジェリークだったが、ひとつ頭に浮かんだ事に捕らわれてオリヴィエの背中を叩いた。
「もう、何さ?」
少しばかり苛立った声でオリヴィエが彼女の唇を解放した。はあと息を継いでアンジェリークは緑の瞳を瞬く。
「オリヴィエ様、わたしまだお土産もらってない」
「今? 後でいいじゃない」
オリヴィエの眉が不機嫌に上がり、その後含みを込めた笑みに変わった。
「ああそれに、お土産はキスがいいって誰か言ってた気がするけど」
意地悪な声の唇に捕まりそうになったが寸前逃れ、赤くなった頬でアンジェリークは首を振って彼の胸を叩いた。
「い、言ったけど、だって! きっと後だと忘れちゃう。ロザリアは先に貰ってるんだから、わたしも欲しい」
やれやれ。オリヴィエは諦めて肩を竦め、アンジェリークから身を離した。そして横のチェストの引き出しからピンクの袋を取り出す。
「はいはい。我が儘陛下のお望み通り。銀糸の惑星はレースが特産品だからね。自分にもいいのが買えてそれは大満足。あんたにはこれね」
「わぁい、オリヴィエ様、ありがとう!」
あっという間に笑顔になったアンジェリークにオリヴィエは苦笑しながら、開けてごらんと促した。
「ロザリアとお揃いのハンカ……」
袋から取り出した繊細なレースを広げたアンジェリークの言葉が小さくなって途切れたが、反対にオリヴィエはご機嫌な声を上げた。
「そうそう、手刺繍されてるトコはロザリアが紫であんたのはピンクだね。いいだろう、このデザイン、華やかでさ。それからこっちはあんたにだけ特別」
どんどん赤さを増すアンジェリークの頬を、オリヴィエの指が突付いた。
離れる指を目で追いながら、アンジェリークは横にいる人物を横目で睨む。
「オリヴィエ様、これわたしに買った、って。ロザリアに言いましたか?」
「ん〜? 言ったかな? どうだっけ」
人差し指を顎に当てて思案する表情はわざとらしく、オリヴィエがとぼけているのは明らか。アンジェリークの咎める目つきの前で彼は肩を竦めて笑った。
「言ったかも。でも見せてまではいないよ」
アンジェリークは彼の土産について話した時にロザリアが顔を赤くしたのを思い出し、困って眉を寄せた。彼女の膝の上に広げられたものは、やはり繊細なレースで飾られた可愛らしい印象の揃いの白いブラとショーツ。道理でロザリアが言葉を濁した訳だ。
当分の間、彼女も貰ったハンカチについてロザリアへ話題として出せそうもないと、アンジェリークはこっそり溜め息を漏らした。
無言になってアンジェリークがレースの品々をピンクの袋に戻そうとすると、その手をオリヴィエが止めた。んふふんと調子に乗った笑い声。
「せっかくだから着て見せて。あんたの我が儘に付き合ったんだから、私の小さなお願いくらい聞いてくれるよね?」
まずゆっくりお風呂入っておいで、とオリヴィエに背中を押され、アンジェリークはバスルームへ追い遣られてしまった。ちゃんと着てね、と念を押された上で。
温まった体に、彼女用にと用意されたシルクのローブの感触が心地いい。寝室のドアの前でアンジェリークは躊躇して足を止めたが、中の人物は彼女の気配に気付いてすぐにドアを開けた。
「はぁい。待ってたよ。ベッドまで抱き上げて運んで欲しい?」
面白がっている声にアンジェリークは慌てて首を振る。
「じ、自分で歩けるから」
横目で窺うと隣の彼もバスタイム後のメイクを落とした素顔。アンジェリークの胸が大きく鳴る。まだそれほど見慣れてはいないオリヴィエのそんな姿は、いつもよりも尖った印象で男性っぽい。
先にベッドへ座ったオリヴィエが組んだ足の上で頬杖を突いてニッと笑う。素顔のそんな表情は色香と共に少しだけ怖いものが含まれているようで、アンジェリークは顎を引いてローブの前を合わせて押さえた。
「あれ? 見せてくれないの? 私のお願い聞いてくれるんだろ?」
口を開けばいつものオリヴィエで、それにほっと息をひとつ吐きながらもアンジェリークはぷいと横を向いた。
「明るくて恥ずかしい。それにそんな期待した顔の前で、自分から堂々と脱いだりできないもん」
ふーん? と目を眇めたオリヴィエに、アンジェリークの心臓の鼓動が速くなる。
「私に脱がせて欲しいんだ?」
その声にアンジェリークの体の温度が何度か上昇する。伸びた手が彼女の腰に回り、アンジェリークは座るオリヴィエの目の前に引き寄せられた。彼女の赤い顔を余裕の表情で一度確認したオリヴィエがローブの紐を解き、ためらわずそのまま前を開いた。
息をのんだのは自分だった筈なのだが、オリヴィエが同じ反応を見せたのに気付いてアンジェリークは逸らしていた顔を彼へ戻した。
「……綺麗だよ。すごく似合ってる」
ほう、と感嘆の溜め息でオリヴィエは彼女の肢体へ視線を注ぎ、アンジェリークは嬉しさと恥ずかしさの混じった笑みを浮かべた。
「ああやっぱり、このレースにしたの正解だったね。カップの上のトコ、肌の見え具合が絶妙」
オリヴィエの視線が彼女の体の上から下へ動き、また上に上る。触られているわけでもないのにアンジェリークの体は視線の移動に合わせて震えてしまう。
「サイズもぴったり。あんたってば最近ちょっと胸大きくなったものね」
満足そうな声に、アンジェリークは唇を尖らせる。
「どうしてオリヴィエ様がわたしの下着のサイズ知ってるんですか。エッチ!」
「この間ドレス作る時、サイズ測ったじゃないか。まあそれはガードルとかの上からだったけど。それにほら、ねえ?」
ねえ? と言われても。アンジェリークは答えに詰まって唇を噛んだ。その間も彼の目は彼女の体から離れない。頬が熱いだけでなく、体の熱も上がっているだろうとアンジェリークは思う。
「Tバックはあんたが嫌がるかなって思ってサイドが紐のにしたけど、Tバックがよかった?」
「ふ、普通のほうがよかった」
身動ぎしたアンジェリークの肩からローブの袖が滑り落ち、両腕まで落ちて止まる。ずっと彼の視線の前にいるのが耐えられなくなり、彼女は身を捩って落ちたローブを寄せようとしたが、簡単にオリヴィエの手にそれは阻まれた。
「ああ、隠しちゃダ・メ。もっと見てたいんだからさ」
でも。金の髪を揺らしてアンジェリークは首を振り、懇願の色をエメラルドの瞳に込める。
オリヴィエは口の端を上げ、捕らえていたアンジェリークの手首を引いて彼女をもっとそばへ引き寄せた。意地悪な声が囁く。
「なに? お願いがあるんなら言ってご覧」
座るオリヴィエの上にアンジェリークは崩れるように倒れ込んだ。そして伏せた顔を彼の胸に摺り寄せるようにして首を振る。
「もう、見ちゃだめなの……! オリヴィエ様のばか」
オリヴィエの手が彼女を膝の上に横向きに座らせ、顔を上向かせる。じっと間近から煙った青の瞳が責める色合いで見つめた。
「どうして? あんたの柔らかくて熱い綺麗な体、隅から隅まで私のだろう? なのにどうして見ちゃダメなのさ」
熱い頬と体でアンジェリークは首を振る。恥ずかしさに手で顔を覆おうとするが、オリヴィエに阻まれてしまう。
「だって……綺麗なレースなのに……汚れちゃうっ」
へえ? 眉を上げたのが分かる声と同時にオリヴィエの手が彼女の膝を割る。下着の上からゆっくりとそこをなぞる指にアンジェリークは声を上げた。
「ん、はぁ……あん、んっ!」
「ねぇ。私、見てただけなんだけど。どうしてこんなになってるの?」
そんな事に平気で返答できる筈もなく、やだぁ、とアンジェリークはオリヴィエの肩に顔を伏せる。同じように足の間で指を動かし、もう片方の手でオリヴィエは彼女の腕にまだ纏わり付いていたローブを下へ落とした。
「言わなきゃ分かんないよ。しようがないな。触って欲しいの?」
耳朶を挟む唇に聞かれ、アンジェリークはうん、と頷く。オリヴィエの首に縋ると、耳から下りた唇に唇を塞がれた。
指がショーツの脇から中へ滑り込み、慣れた動きで彼女の敏感な部分を刺激していく。アンジェリークはオリヴィエの舌へ自分から舌で触れて吸い、指から与えられる快感にくぐもった声を上げる。
首に添わせた手がオリヴィエの肌を求めて彼のローブの中を進むと、キスを続けながら彼はローブを器用に脱いだ。促され導かれた彼女の手が彼へと触れた途端、唇を蹂躙する舌の動きは激しくなった。
「アンジェ。アンジェリーク……可愛いよ」
「んっ……あぁ、あ、オリヴィ……」
狭い隙間からなのに的確に動く指は彼女の蜜を更に呼び、絡み付かせてまた動く。体の熱が上昇し、アンジェリークはすぐそばまで来ている昂ぶりを予感して背を奮わせた。けれどあと少しの所でオリヴィエの指はそれを知りながらそこから抜かれ、彼女は眉を寄せて首を振る。
「やぁ、なんで。……めちゃ、やっ」
ふふっと笑ってオリヴィエはベッドへアンジェリークの体を横たえた。
「分かってるよ。もっと、したげる。ねぇ? いかせて欲しい?」
下へ下りて行く唇が意地悪な声で問う。そしてショーツのサイドのリボンを白い歯が捕らえてゆっくり引いた。アンジェリークは上目遣いのブルーの瞳を見返して必死に頷く。
「うん。お願い……いかせ、て」
引いたリボンを口から離すと、オリヴィエは唇を舌で舐めて微笑んだ。可愛い、目を細めてそう呟く表情はいつもは見る事のない彼の夜の顔。アンジェリークは熱い息で喘いだ。
指で唇で舌で。アンジェリークは拓かれ声を上げた。愛撫の交歓へもためらいはなく、オリヴィエの望むままアンジェリークが彼へ触れるとそれも喜びとなって彼女へ還る。たちまち上り詰めた彼女へ容赦せず愛撫が続いて、もうアンジェリークには訳が分からなくなる。
好きだよと囁かれて好きと返し、欲しいかと問われて欲しいとせがんだ。
「ア……ふ、……ンッ!」
「ん……ふふ。ほぉんと、可愛いんだ……か、ら」
やっと与えられた灼熱に息を止めたけれど、語尾が揺れるオリヴィエのその声にアンジェリークはもっと満たされる。彼の余裕が崩れるくらい、感じてくれているのだと。
「は、あ。すっごくイイ……久しぶり、だよね。あんたの……」
オリヴィエは奥まで進めた体を動かさず、胸もぴったり合わせてアンジェリークを目を細めて見る。うん、と頷いたアンジェリークの指へ彼の指が絡まり、快楽を追うのを一時置いて二人は互いを見詰め合った。愛しさが溢れてアンジェリークの瞳はあっという間に雫を湛える。
「ずっと、会いたくて、それで……っあ」
オリヴィエの腰が少し動いただけで息が上がり、腰が揺らめいた。閉じた瞼から涙が頬を伝うと、オリヴィエの唇に拭われる。その刺激にもアンジェリークは声を上げてしまう。
「それで……? こうしたかった?」
低い声で耳元で囁かれる声に、アンジェリークはためらいなく頷いて返した。
「ンッ、ん……こ、したかっ……ああっん」
馴染ませるようにゆっくり動き出したオリヴィエを彼女は受け止める。曲げた足を抱え込まされると繋がる角度がきつくなり、上げる声が大きくなった。
「やっ、あぁ……ん、やあっ!」
アンジェリークがイヤイヤと首を振ると、その唇をオリヴィエの素のままの唇が追う。
「ヤなの? いいの? どっち?」
「ん、あっ、オリヴィエさ……いい、の、ンッ、んん」
「じゃあもっとしたげるね。ン……」
唇も繋げたままオリヴィエの動きが速くなり、アンジェリークは必死に彼について行こうとする。揺さぶられて息が上がるが、オリヴィエの舌が彼女のそれに絡み付いて呼吸すらおぼつかない。
「っ苦しっ……ぁんン!」
苦しいが、それがもっと快感を煽る。そのまますぐに高い所へ飛んでしまいそうだったけれど、オリヴィエの動きがゆっくりになったかと思うと、アンジェリークは背に手を入れられて抱き起こされた。
座るオリヴィエの上に乗せられると、自分の体重がそこにかかる。彼が奥まで当たるのを感じてアンジェリークは頭をのけぞらせた。
「すごくイイんだけど、マズイ。さっきのままだとすぐ……」
苦笑を滲ませたオリヴィエの肩に両腕を回してしがみつき、アンジェリークはキスをねだる。けれどそこから逃げて口の端を上げたオリヴィエの唇。
「自分で動いてご覧。気持ちイイトコ、探すように、ね」
アンジェリークが頷くと、ちゅっとご褒美のキス。そのまま彼の唇は彼女の胸へと下りて行き、その先を含んで吸う。その様子も、オリヴィエの手がもう片方の胸をゆっくり揉む様子もはっきりと目が捉え、そこでアンジェリークはやっと気がついた。今夜はずっと寝室の照明が落とされても絞られてもいなかった事に。
「やだ……ンんッ。あ……ずっと電気ついてた? 見て、た?」
頬を染め咎めるように言いながらも、アンジェリークの腰は揺れ出してしまう。喉の奥で笑うとオリヴィエは上目遣いに彼女を見た。舌で彼女へ刺激を与えながら。
「明るくてやだ、って言わないから、あんたも喜んでるのかと思った。私が見てるのがさ」
言われてアンジェリークは首を振る。けれどそれは拒絶ではなく羞恥から来るもので、そしてオリヴィエもそれを知っていると彼女も知っていた。
いつも。見つめられるだけで熱が上がる。まるで魔法に掛けられるように。そして彼の特別な視線が、ずっと自分にだけ向けられるものでいて欲しいと狂おしくアンジェリークは願う。
「だって。恥ずかし……。わたしばっかり、こんなに。ふっ、ぁん」
擦り付けるように腰が動く様もオリヴィエの目に捉えられているのが恥ずかしい。なのにもう止められない。
「いいんだよ。私にだけもっと熱くなったトコ見せて。好きだよ、アンジェリーク」
わたしも。答えようとした言葉はオリヴィエの唇に取られてしまった。
「うまくできな……ンッ、手伝って……!」
首に縋ってアンジェリークが懇願すると、笑ってオリヴィエは彼女の腰を支えて動きに手を貸した。持ち上げられた体が落とされると、奥へ当たる衝撃にアンジェリークは声を上げる。更にそれに合わせてオリヴィエが突き上げ、彼女は揺れる体を支えているのすら困難になった。
アンジェリークの足をオリヴィエが腕に掛けて上げると、それによってもっと彼女の弱い部分が擦られ、手が彼の肩から外れそうになった。
「っひゃあ……! やだっ、落ち、ちゃう……!」
オリヴィエの動きが一度止まり、アンジェリークはシルクのシーツの上に背を下ろされた。ひやりと滑らかで冷たいシーツに手を伸ばすと、オリヴィエは腕に掛けていた彼女の足を肩へ担ぐ。
再びオリヴィエが動き出すと、それまでよりもっと深く受け入れる事になりアンジェリークは息をのんだ。何度も。続け様の強い刺激にアンジェリークの頭の中に白い光が弾ける。
けれど一気に加速はせずに、加減しながらオリヴィエは彼女の快楽を操った。多分、彼はできる限りこの時間を引き延ばして楽しみたいのだろうとアンジェリークは感じる。
「最高。あんたも……イイんだね?」
熱く濡れた声に頷き返し、言葉にならない声を上げる。シーツの上を彷徨う指がオリヴィエの指に捕まって絡め取られた。
「も、ダメっ……! オリヴィエ様、わたしっ……!」
アンジェリークが限界を告げると、ふっと微笑みと共に返された許しの声。
「いいよ、いって。一緒に、ね」
その言葉通り、あと一息をオリヴィエは巧みに追い上げ、アンジェリークは彼と一緒に高い所へと飛んだ。
抱き寄せられて脇の窪みへ頭を乗せると、アンジェリークはほっと息を吐いた。背へ回された手が優しく肩を包み込む。
いつの間にか暗くなっていた部屋。緩やかな時間の倦怠感に漂い、アンジェリークは聞こえて来たオリヴィエの声に耳を澄ませた。
「私をこんなに熱くさせるのはあんただけ。私ばっかり、って、私が言いたいくらいなのに、分かってるのかな、私の女王陛下は」
目を閉じたままアンジェリークは、うふ、と笑う。
「もっと。もっとわたしが調子に乗っちゃうようなこと、聞かせて」
こーら。オリヴィエの片眉が上がったのが見えるようだったが、その後微笑みに変わったのにも簡単に気付ける声音が続く。
「ま、今日は大変な一日だったものね。いいよ。いっぱい甘やかせちゃおうかな」
オリヴィエは自分の髪ひと房を手に取ると、その先でアンジェリークの頬をくすぐり、彼女は笑って身を捩った。
「あんたは他の誰にも代わるコトのできない存在だもの。私のあんたがそんなすごいのってさ、私にとっても自慢だし。だから余計に、こうして傍にいられるコトがなんて幸運なんだろうって、思うよ。……でも、会える時も、会えない時だって、どんな時でもあんたが好きだよ」
自分も同じ事を思っていた。アンジェリークは目を開くとオリヴィエの顔を見上げる。
そこには、堪らなく愛しげな表情で彼女を見る青い瞳。じっと見つめるだけで、彼女の胸の鼓動を速くさせる特別な瞳。それは女王という立場なんてあっという間に溶かしてしまうくらいに熱いものを、彼女へもたらす。
「大好き。ずっとわたしの特別でいて」
微笑みに細められる煙ったブルー。
「あんたもね、アンジェリーク。約束。ずっとだよ」
ぎゅっと抱き締める腕と声に包まれ、アンジェリークは力を抜いてオリヴィエに身を預けた。
小さな約束をそばでいつも交わせるようにと願いながら。
end
表の「そばにいる、それだけで」の続きですが、
元々はこちらメインで書こうと思ってました。(ってこら、オイ!)
おかげであちらと同じくらいの分量に…! ←欲求に忠実すぎ。
触る前までは勢いよく楽しく猛スピードで書いたんですが、
肝心なとこからは筆が遅くなるのでした。ううう。いつもです。
あ、夢誕の夜中絵チャで「紐パンの紐を口で銜えて」
ってのがあったのでそちらへもトライしてみました。
こんな感じでよかったでしょうか?>関係者各位様v
やっぱりオリヴィエ様のRが大好きです。少しは恥らえ自分v
2009.11.24